このページでは、英文法の学習法を解説しています。
文法を学ぶときは、アウトプットを目標にする
まず、文法を学ぶ目標を明確にしておきましょう。
目標となる基準がないと、「一通り文法を学習したけど、本当に身についているのかわからない」という状態になるからです。
目標があることで、学習の張り合いもでますし、実力を客観的に測ることもできます。
文法を学ぶ目標は3つある
では、文法を学ぶ目標とは、どんなものでしょうか。
英語を理解するため。英語力をつけるため。 こういった目標でも間違いではありませんが、もう少し具体的な目標を設定する必要があります。
おそらく文法を学ぶ目標は、以下の3つになると思います。
- インプット :テキストの英文が読めるようになる。あるいは、リスニングした英語を理解できるようになる。
- アウトプット :英語を話せるようになる。あるいは、英文を書けるようになる。
- 問題を解く :試験やTOEICなどの文法問題で正解できるようになる。
3番目の「問題を解く」は、番外的な目標です。細かい文法項目を暗記する学習になりがちで、すべての人に必要な学習ではありません。
一般的には、「インプット」のための文法学習が行われています。テキストの英文を読んで、その英文を理解するために文法項目を抜き出して学ぶ。
その学習が間違いというわけではありませんが、私は「アウトプット」を文法学習の目標にすべきだと考えています。
アウトプットが目標になる理由
文法学習の目標をアウトプットにおく。 その理由は明白で、文法を身につけるのに有効な学習がアウトプットだからです。
助動詞でも仮定法でもいいですが、何らかの文法事項を学ぼうと思ったら、その英文を自分で作ってみることです。(アウトプットしてみることです)
最初は一部を変えて書くパターンプラクティス。 次は英作文といった順序になるでしょう。
そして、その文法事項を使った英文を話せるようになったり、書けるようになる。アウトプットできるようになる。
それを目標にしてしまった方がシンプルです。
特に、初級レベルの方は、自分なりの英語を話したり、書けるようになるために、(つまり、アウトプットのために)、文法を学んでください。
インプット(英文を読んだり、聴いたりすること)を目標にすると、どれだけ文法を学んでもきりがありません。少し難しい英文が出てきただけで、まったくわからなくなるからです。
どれだけ文法を学んでもわからない英文だらけで、自信を失ってしまいます。
アウトプットなら、確実に「できることが増えていく」わけですから、自信をつけながら文法を学ぶことができます。
もちろん、アウトプットを目標に文法力をつければ、インプットの力もついていきます。
ゼロから英語を学ぶとしたら、文法は後回しにする
ここでは、英語が極端に苦手な人に向けて、文法を後回しにする方法を提案します。
語学といえば文法を思い浮かべる人が多いと思います。
文章を理解したり、文章を作るためには、文法は必要になりますので、語学と文法は切り離すことはできません。
しかし、もしゼロから英語を学ぶのだとしたら、文法は後回しにした方が効果的かも知れません。
英語で最初に学ぶのは何か
仮に私が英語力がゼロだとして、今から英語を学ぶとしたら、文法は後回しにします。
なぜなら、文法は後から学んだほうが効率的だからです。
「後から学ぶ」というのは、次のような意味です。
ゼロから英語を学ぶとしたら、最初にやるのはフレーズです。
1000個のフレーズを覚えます。
1000個というと多いようですが、”Yes.””No.””Good Morning.”など超基本の言葉も含めてです。
日本人なら英語を学ぶ前から、200~300個の英語フレーズは漠然と知っているはずです。これだけ英語の氾濫した社会なので。
その200~300に加えて、日常会話とか海外旅行で使うような基本的な表現・フレーズを学んで、合計1000個覚えるわけです。
ちなみに、テキストではなく、音声を中心にして学びます。 聴いてわかる、自分で発声できる。これをもって「覚えた」と言います。
(文字を見ればわかるけど、聴いてわからない、というのはダメです)
これだけで、「なんちゃって英語スピーカー」ですよ。 度胸があれば、ボディランゲージを使って、けっこうコミュニケーションが取れます。
その次の段階になって、はじめて英文法を学びます。
なぜ、文法は後から学ぶべきか
なぜ、文法を後回しにするのでしょうか?
それは、文法は知識の再整理として学ぶのが、一番効果が高いからです。
すでに知っている英語にたいして、文法的な解説を付け加えた方が「理解が早い」のです。
まったく英語を知らないような人に、be動詞を教えてみたり、助動詞を教えてみたり、関係詞を教えてみても、実は遠回りなんですね。
すでに、be動詞の含まれた英語フレーズ、助動詞や関係詞の使われた英語フレーズを知っている人にたいして、それぞれのフレーズの文法的な側面を教える方が、本人の理解が深まるのです。
何もないところに水をまくより、種の植えられたところに水をまくべきなのです。
もう一つ、無視できないのは、学んでいる本人にとって、その方が楽しいということです。
言葉はまず、単純にコミュニケーションを楽しむ。
文法なんか知らなくても、覚えているフレーズをちょっと使って、海外旅行で異文化の人とやりとりしてみれば楽しいはずです。
そういうことができるようになって、その次に、今まで使っていたフレーズの文法的な側面を知る。 そうすると、一気に応用が利くようになって、ますます英語が楽しくなります。
英語では無理でも、第二外国語なら可能
ただし、このような学び方は、学校から英語科目をなくさない限り、無理かもしれません。
数ヵ月毎の学期試験、数年毎の受験。そのために英語を学ぶとしたら、文法後回しの学習ステップは難しいからです。(文法抜きでは試験問題が作れない)
今後、英語以外の第二外国語を学ぶときは、試してみてください。 フランス語でも、中国語でも、外国語を学ぶのは楽しいものです。
その際は、典型的な教材にみられるように、文法項目通りに学ぶのではなく、1000フレーズ程度を学んでしまって、旅行でいきなり使えるようにしてしまうのです。
その次に、それらのフレーズを深く理解するための文法を学んでみてください。 より早く、より楽しく、外国語が身に付くはずです。
もし、英語が極端に苦手なら、ゼロから英語を学ぶつもりになって、上記のような学習手順を試してください。
文法は問題を解くより多くの例文に触れる
文法の習得するときには、できるだけ数多くの例文に触れることが大切です。
身に付けたい文法項目について、例文を音読したり、あるいは英作文することです。
学校で英語を習ったときに文法が嫌いだった人は、問題を数多く解かされたことが原因ではないでしょうか。
文法というと些細なパズルをやらされるイメージが染み付いてしまうと、文法嫌いになり、その結果として英語がわからなくなり、英語が苦手になってしまうことがよくあります。
文法は問題を解くためのものではなく、英語の仕組みを理解するためのものです。そして、英語を直感的に理解したり、英語の文章が作れるようになるためのものです。
(注)ただし、下記で解説するパターンプラクティスは別です。パターンプラクティスは回答がいらないほど簡単な問題なので、いわゆる英文を作ってみる練習です。受験に出てくるような「文法正誤問題」などは不要ですが、パターンプラクティスは「例文を元に英文を作る」練習なので必須です。下記で説明しています。
説明だけ読んでも文法の習得できない
文法が身に付かない人の典型は、解説だけを読んでしまっていることです。
むしろ、解説に付いている例文に注目しなくてはいけません。例文を何度も音読したり、自分でその例文を書いてみることです。
文法は読むのではなく、例文を発声すること、例文を書くこと。 これが文法習得の大前提です。
文法を習得するならパターンプラクティスが欠かせない
英文法を身に付ける上で、もっとも中心となる学習は何でしょうか。
パターンプラクティスです。
意外なことに日本の学校英語ではほとんど行われていません。
英文の書き換えを大量に
パターンプラクティスとはどんな練習でしょうか。
典型的な問題を1つ紹介します。
パターンプラクティスと言えばアメリカ口語教本なので、中級用から引用します。
以下の問題を見てください。
Change the following as in the example. Use prefer.
Ex. He makes things. / He prefers to make things.
He doesn’t make things. / He prefers not to make things.(Continue with the following.)
1. He doesn’t buy furniture ready-made.
2. He put the parts together himself.
3. He painted it himself.
Ex.(例文)にあるように、preferを使って英文を書き換える問題。
prefer to (好む)/ prefer not to (好まない) の表現を身に付けるためだけのパターンプラクティスです。
3問まで書きましたが、実際は10問以上行います。
まず、驚きなのは、たった1つの表現を身に付けるためだけに、10問以上の問題をこなすということ。
(「問題を解く」というより、「自分で英語を作ってみる」ということ)
日本の英語の授業だったら、どんな風に教えるでしょうか。
「prefer to do ~することを好む」 と黒板に書いて、終わり。(笑) ありがちです。
もちろん、そんなことでは、この表現が使えるようになりません。 たった1つの表現のために、10問以上のパターンプラクティスで学んでいくのです。
どんな文法項目もこのようなパターンプラクティスで学ぶことができます。
助動詞でも、関係詞でも、仮定法でも、1つ1つの表現をパターンプラクティスで練習する。
解説を聞いて終わりではなく、なんども同一パターンの英文を作ってみるのです。 だからこそ、文法を実際に使えるようになります。
解答がいらないほど簡単
上記で引用した問題を見ると、もう1つ驚くことがあります。 それは簡単だということ。
例文にあるように表現を入れ替えるだけ。
He doesn’t buy furniture ready-made.
↓
He prefers not to buy furniture ready-made.
そう。パターンプラクティスは簡単なんです。 だから、解答はいらない。
上記のアメリカ口語教本には解答が付属していません。 パターンプラクティスというのは、あまりに自明な問題ですから、解答はいらないんですね。
問題というより、練習ですから。
日本で普及しない理由はここにあると思います。
簡単すぎるので、テストで使うことができない。だから、学校英語では使用しないのだと思います。
つまり、学校英語では、「文法を解説する授業」と「試験」の2つ。すっぽり大切なことが抜けています。
文法を身に付けるための「パターンプラクティス」がないんです。文法が身に付くはずもありません。
難しい文法正誤問題なんてやっても、文法は使えるようになりません。
文法の習得には、簡単な英文の書き換えを大量に行うパターンプラクティスが欠かせません。
文法は繰り返し練習する
音読を10回、20回と繰り返す人はたくさんいます。 しかし、文法を同じように10回、20回とやる人は少ないようです。
1回読んで文法をマスターするなんて、やっぱり無理な話です。
マスターするまで繰り返す癖をつけよう
よほどの天才でない限り、1回聞いてマスターというのはありえません。
「仮定法」という文法項目を学ぶときに、一度だけ解説を聞いて、それで仮定法を自在に使いこなせるでしょうか。
マスターするためには、以下をやる必要があるでしょう。
- 解説を何度も読む。
- 解説に出てきた例文を何度も読む。声に出して。
- 仮定法のパターンプラクティスを何度もこなす。
- 仮定法の和文英訳を何度もやってみる。
- 自分で仮定法の英文をフリーライティングしてみる。たくさん。
- 文法問題集の仮定法の項目をやる。間違ったところを何度も。
仮定法に限らず、他の文法項目であっても同じです。 何度も繰り返しやることで、マスターできるのです。
しかし、なぜか文法を繰り返し学習する人は少ないように思えます。
英会話の教材を音読する人はたくさんいます。 10回、20回、30回と声に出して読む。 オーバーラッピング、シャドーイングをやる。 ディクテーションをやる。
そういった練習はやるのに、文法の勉強は、驚くほどさらっとしているケースが多いです。
解説をさらっと読む。すぐに次の項目に進む。またさらっと読む。
その繰り返し。 これではいつまでたっても文法が身に付きません。
文法こそ繰り返しが必要です。