似ている言語は習得が簡単。 似て非なる言語は、習得が難しい。
当たり前といえば当たり前の話です。第二言語習得研究(SLA)においても、「言語間の距離」という概念があります。
英語と日本語は距離が遠すぎる
日本語と英語は言語間の距離がかなり遠いとされます。 文字表記も発音も文法も、何一つ似ている部分がありません。

どう考えても、日本人にとって英語の習得は難しいわけです。 もちろん、英語を母国語とする英米人からみれば、日本語の習得は難しい。
実際、日本語をマスターした英米人は非常に少ないでしょう。日本語を学ぶ母集団が少ないということもありますが、やはり難しいからです。
日本語の会話ならなんとかなっても、読み書きは至難の業です。 それは、ちょっと想像してみればわかります。 漢字、ひらがな、カタカナ、いったいいくつの文字を覚えなくてはならないことでしょう。
日本人でさえ、小学生のころからうんざりするほど漢字の書き取りをさせられて、それでやっと日本語の読み書きを習得してきたのです。
英米人は、漢字のような表意文字を認識する脳細胞が発達していないわけで、大人になってから日本語の読み書きを身につけるのは、絶望的な努力を必要とします。
だから、逆に言えば、日本人が英語ペラペラになるのも、同様に難しいのです。 それだけ言語間の距離がありますから。
言語間の距離が近ければお手軽な学習も可能
たとえば、フランス人やオランダ人にとって、英語を学ぶことは、日本人に比べれば簡単です。
アルファベット、単語、文法、発音・・・似ている部分が多いからです。言語間の距離が近い。
以前、聞いた話ですが、フランス人の主婦が英語を学ぼうと決めたそうです。何をやったかというと、英語の教材テープを流しっぱなしにして、皿洗いやアイロンの最中に聞き流したそうです。
そういう教材が日本にもありましたね。(笑)
そのフランス人の主婦は、そこそこ英語を話せるようになったそうです。言語間が近ければ、こういう学習でも会話ができるようになったりします。
日本語と英語は距離が遠いので、日本人が聞き流しで英語を身に付けるのは率直に言って「不可能」です。
ヨーロッパの人々が、「英語なんて簡単さ」なんていうのを真に受けないようにしましょう。 同じ印欧語なので、兄弟みたいに似ている言語です。簡単なのは当然。
英語の難易度は、母国語がどんな言語かで決まるのです。
日本人が習得しやすい言語は何か
では、日本語ネイティブである私たちにとって、簡単に身につけられる言語は何でしょうか。つまり、言語間の距離が近い言語は何か。
残念がなら、日本語は「孤立した言語」のため、極端な類似性をもつ言語がありません。 もっとも、日本語の起源をめぐる議論は確定していないため、研究者によって意見の相違はあるようですが。
朝鮮語・韓国語はどうか
比較的近い言語として、同じく孤立した言語の朝鮮語(韓国語)があります。
実際、韓国語を学んだ人の中には、「覚えやすい」とか「簡単」という人が多いです。
文法はかなりの類似性を示すそうです。 ただし、基本語彙や発音が大きくことなるので、期待するほどの類似はありません。
そうはいっても、少なくとも英語を習得するより、努力は少なくて済むことは間違いありません。朝鮮語を習得するまでの時間は、英語に比べれば極端に短いはずです。
中国語はどうか
最近、学ぶ人が急増している中国語はどうでしょうか。
繰り返しますが、日本語は「孤立した言語」なので、兄弟言語と呼べるほど近い言語はありません。日本語と中国語は、文法も発音もまったく異なります。
ただし、漢字という共通のベースがあります。 古来、日本が中国から漢字を輸入したので、同じツールを持つことになりました。もちろん、現在の中国が使っている漢字は、すべてが同じではありませんが。
テレビで中国の街角が映ったとき、看板がけっこう読めて、何の店かわかることに驚いたことはないでしょうか。漢字=語彙も、けっこう似ているものがあって、取り組みやすいことは間違いありません。
少なくとも、欧米人が中国語を学ぶのに比べれば、日本人が中国語を学ぶときの方が、苦労は少ないはずです。
外国語が難しいのは錯覚
語学において、「言語間の距離」は絶対に覚えておきたいポイントです。
「外国語だから難しい」わけではない。難しいかどうかは、言語間の距離によって決まります。
朝鮮語(韓国語)や中国語が、今の英語のような地位にあったら、私たち日本語ネイティブはものすごい有利でした。その前に、日本語が世界共通語だったら、もっと楽でしたが。
しかし、幸か不幸か、私たちにとって非常に難しい言語である英語が、世界共通語の地位を占めつつあります。ビジネスの現場では完全に英語が共通語です。
英語学習を頑張るしかないです。
英語は難しいわけだから、長期戦で、じっくり取り組みましょう。