このページでは、英語の学習メソッドである「音読」について、学習法・コツ・注意点などを解説しています。
音読のメリット
英語の学習法として、もっとも基本的なトレーニングは音読です。
あらゆる場面で音読の重要性が叫ばれているので、「音読が大切だ」ということはみなさんご存知かも知れません。
今回、「なぜ大切か」という点を確認してみたいと思います。 これから英語の音読を始めようという人にとっては、メリットを確認しておくとモチベーションの維持に役立つかもしれません。
「とにかく、やった方がいい」といわれるより、「~というわけで、やった方がいい」といわれた方が、納得して学習できるはずです。
音読のメリットはイメージ化
音読の最大のメリットは、英語の文章と意味を直接結びつけることができるという点です。
具体例でみましょう。 以下、中学3年生の教科書にある英文です。
Sign languages are used around the world.
「手話は世界中で使われている」という意味ですが、これを中学生に黙読させるとどうなるでしょうか。
黙読では日本語訳しながら意味をとってしまう傾向があります。
Sign Languages という部分で「手話」と訳し、are used という部分で「使われている」と訳し、around the world で「世界中で」と訳し、といった具合です。
初級レベルの方は、このように黙読していませんか? 英文を黙読したときに和訳してしまうのは、やむを得ないことなんです。
しかし、日本語訳で理解する学習をしていると、いつまでたっても英語が身に付きません。英語をとっさに日本語に訳して、「わかったような気がする」という状態が続いてしまうのです。
そこで、音読をします。10回、20回、30回と。
声に出して読むときは、日本語訳ではなくて、イメージ(意味)そのものを結び付けることになります。
なぜなら、英語を声に出しながら同時に日本語訳を思い浮かべるのは、むしろ難しいからです。 音読しているときに脳が同時にできることはイメージです。
試しに、Sign languages are used around the world. を音読してみてください。
意識が集中しているのは、読もうとする「英文」だけではないでしょうか。 同時に、「手話は世界中で使われている」なんて日本語は、ほとんど浮かばないはずです。
音読によってイメージと英文が直接結びつくようになるんですね。 英文を黙読するときに行っていた日本語訳の癖を取り除くことができるのです。
英文の理屈がわかっているのは大前提
音読によって英文と意味(イメージ)を結びつけるわけですから、意味は理解している必要があります。
まったくわからない英文を音読しても意味がありません。 その英文を読んでもチンプンカンプンの状態で、とりあえず声に出したところで、音読の効果はほとんどないでしょう。
英文に出てくる単語、表現、文法など、一通り学習が終わっている必要があります。
かつて、英語の勉強というと、単語・表現・文法といった「理屈」だけを学ぶ人が多かったようです。 英文の中に「わからない部分」がなければそれで良し、という感じでした。
しかし、理屈だけ学ぶ勉強法では、せいぜい日本語訳ができるようになるだけです。いつまでたっても使える英語が身に付きません。
そこで、音読の出番。 理屈とか意味はすでにわかっている英文を音読することで、日本語訳を取り除いて、英語をそのまま体に染み込ませることになります。
音読をしっかり積み重ねておけば、日本語訳をしなくても直接的に英語がイメージできるようになっていきます。
音読のやり方
次に音読の学習方法についてご紹介します
音読するときに気をつけるポイントが3つあります。
音読はオーバーラッピングの後に行う
一番大切なポイント。音読を行う前に、必ず模範のネイティブ音声でオーバーラッピングしましょう。
オーバーラッピングとは、ネイティブ音声に合わせて英文を読むことです。
いきなり英文を読もうとしても、発音・イントネーション・スピードすべてがデタラメになるからです。
発音やイントネーションがわからないままで英文を読もうとすると、不安げに、恥ずかしげに、恐々と英語を発声することになります。これでは練習していて辛いし、なにより上達しません。
最初にネイティブ音声に合わせて声に出しておけば、発音やイントネーションの不安感がなくなります。自信をもって英語を口から出せるようになります。
このポイントは、意外にも知られていないように感じます。学校英語でも、オーバーラッピング抜きでいきなり生徒に音読させているケースが多いようです。音読嫌いの生徒が増えないか、心配しているところです。
音読は有名な学習メソッドですが、むしろオーバーラッピングに多くの時間を割くべきです。
英文の内容を理解できていること
音読の目的は、英文と内容(イメージ)を結びつけることです。
そのため、英文の内容を完全に理解していることが前提になります。音読しようとする英文に疑問点があってはいけません。
単語や表現はもちろん、文法構文においても、その英文が理解できていること。 オーバーラッピングを行って、発音やイントネーションの不安をなくす。
そういった学習を終えてから、最後に音読することになります。 音読は「仕上げ」として行うものです。
内容をイメージしながら音読すること
心は上の空のまま、ただ英文を声に出してみても学習効果がありません。
英文を声に出して読むときには、必ずその内容をイメージしながら読んでください。 読みながら、「なるほど。なるほど」と内容を理解していく感じです。
さらに、近くの人に語っているように読んでみてもいいでしょう。
これによって、英語とイメージがつながるようになります。 日本語を介した英文理解ではなく、英語をそのまま直解できるようになります。
使用する教材
音読に使う教材は、ネイティブの音声付きであることが絶対条件です。
音声がついていない教材は、オーバーラッピングも音読もシャドーイングもできないため、教材として不適格です。
レベルについては、日本語訳に頼らずに英文の内容を理解できるレベルを用意してください。
英文に使われている語彙や文法が難しいと感じるような英文は避けましょう。そのような英文は、英語を発声した時にイメージ化が難しくなり、音読の効果が低下してしまいます。
リクルートのスタディアプリは、膨大な量のドラマ形式教材があって、音読学習にも最適です。
パソコンやスマホで学習する教材です。
音読の回数はどれくらい?
非常によく聞かれる質問に「何回くらい読めばいいですか?」というものがあります。
いざ音読練習を始めようとしても、どのくらい回数読めばいいのか、学習量がわからないと言うのです。
最初に、実力レベルによって音読の練習量が違うことから説明します。
初級レベルの方は、音読が学習の中心になるので、読む回数は多くなります。 中級レベルまで上がってくると、音読以外の学習が増えてきますので、練習量は少なくなるはずです。
初級レベルは音読回数が多く、上達とともに音読の学習は減っていく。
これが前提となります。 では、初級レベルの方は1日に何回くらい音読すればいいでしょうか。
ずばり30回!
初級者の音読は、1日30回が大雑把な目安です。 根拠は以下の通りです。
初級者の方が1日に学習する英文の量は限られています。 学習している英文を音読してみると1分以内に読み終わるはずです。
30分間で音読できるのは、ほぼ30回くらいになります。
つまり、何回読めばいいかで決めるのではなくて、1日に何分間くらいを音読の時間に当てるのかを考えるのです。
1日30分、英語を声に出す練習時間を確保する
30分という練習量が初級者の方にとってベストだと考えています。
これ以上の時間を確保しても、疲れてしまって集中力がなくなりますし、負担が多すぎると継続できません。
逆に、これより短いと学習効果が薄くなります。英語力の上達ペースが遅すぎると、学習の意欲がもてなくなります。(少なすぎる学習量というのも、むしろ継続を困難にするのです)
ということで、1日30分音読するのが基準で、その結果、おそらく30回くらい読むことになるでしょう。
その30分間の中には、オーバーラッピングも含まれています。
中級レベルの人なら、シャドーイングやセンテンス・リピートを30分間やることになるでしょう。
要するに、「英語を声に出す練習を1日30分やりましょう」ということです。
声に出す練習は、英語学習のすべてではありません。
文法、語彙、表現、リーディングなどの学習は、声に出す30分間の練習とは別にやらなければなりません。
1日30分の音読が無理なら
音読(含むオーバーラッピング)のためだけに1日30分を使う。
この学習量が「多すぎる!」という方がいました。
上記で解説した、「初級者なら、音読のためだけに1日30分」という学習量は、本気で英語を身に付けたい人のケースです。
本気で英語を習得するつもりなら、これ以下の勉強量ではどうにもなりません。
(注) : 英語上達のコツで説明していますが、2時間連続のまとまった時間を確保する必要はありません。細切れの時間を使えばいいのです。
初級者のうちは1日30分を音読。 これはけっして多すぎる学習量ではないのです。
「学校の単位を取れればいい」 「英語が楽しめる程度でいい」 「もっと他に勉強することがある」
こういう方も少なくありません。 人によっては、英語よりも優先すべきことがたくさんあるでしょう。
そのケースでは、1日10分ほど音読してみてください。 英語すべての学習時間は1日30分以内になるでしょうか。
毎日続ければ、これだけでも上級者になれます。
音読するときに声を張り上げる必要はない
音読が効果的な学習法だというのは多くの人がご存知だと思います。しかし、音読といってもどのくらいの声を出せば良いのか疑問に感じたことはないでしょうか。
ある社会人の方に英語学習のアドバイスをしたのですが、実力を測るための一環として音読をやってもらったことがあります。そのとき、突然大きな声になってびっくりしました。
「いやいや、ごく普通に話すときの声でいいんですよ」
とアドバイスしたのですが、もしかしたら同じように大声で音読している人が多いかもしれません。
おそらく、中学や高校の授業で、教科書を読まされた経験が影響していると思います。授業中に指名されて教科書を読むときには、あの広い教室の隅々まで響くように音読することを強制されます。
そういった授業の印象が強いため、「音読」ときいて「子どもっぽい行為」と思い込んでいる人さえいます。「子どもの頃にやらされたように大声で文章を読むなんて・・・今さら・・・」と忌避している人もいるでしょう。
しかし、独学で英語の音読をするときにそんな大声を張り上げる必要はありません。部屋に友人がいると仮定して、その人と話すときに出す程度の声量でいいのです。
だとしたら、音読学習をやる気になりませんか?
普通の声で、(もし良かったら)自分なりに気持ちよく、英語を読んでみてください。読みたい声量で、読みたい雰囲気で、読む。これが音読を続けるコツです。
「大声を出したほうがストレス発散になるから、そうしたい」というなら構いませんが、そうでないなら大声を出す必要性はまったくありません。
声を張り上げるのは疲れますし、近所迷惑になる可能性もあるため学習時間や場所に制約が出てしまいます。
ごく近くに居る人に1対1で普通に話すときの声量なら、疲れないので多くの学習量を確保できます。
夜に練習している方は、小さめの声でも問題はありません。 時間や場所の制約も少なくなるように声量を自然に調節してください。そうすると音読をする気になると思います。
効果のない音読
どんな学習法でも効果的なやり方とそうでないやり方があります。
音読は英語を身につける上で欠かせない重要なトレーニングですが、必ずしも効果があるとは限りません。
効果の薄い音読のやり方があるのです。 ただ声に出して、2,3回読んでみるだけでは、ほとんど効果がないことでしょう。
そのような効果のない音読とはどのようなものか考えてみます。
このページで解説してきたことと重なりますが、効果的なやり方が鮮明になりますので確認してみます。
以下、英語力の向上に役立たない音読法です。
内容を理解していない
意味のわからない英文をとりあえず声に出してみても、それほど効果はないでしょう。 もちろん、「わからなくても、まず真似てみる」という学習はあるのですが、少なくとも音読としての学習効果はありません。
音読はイメージと英語を結びつける学習です。英文の意味を理解していないとイメージが浮かび上がらないため、効果が薄くなります。
音読する前に必ず英文の学習をしておきましょう。音読トレーニングの前に、単語の意味、文法・構文、表現など、すべての学習を終えておく必要があります。
内容をイメージしていない
上記の繰り返しとなりますが、音読というのは英文の内容をイメージしながら読むものです。
声には出しても、心は上の空で、まったく内容をイメージしていないとしたら、学習効果の薄い音読になってしまいます。
特に初級レベルの方は、意識的に内容をイメージしないと、読んでも内容が浮かび上がってこないはずです。
英文の内容を考えながら(イメージしながら)音読することを忘れないでください。
模範となるネイティブ音声を使っていない
自己流に適当に英文を読むことは避けるべきです。発音、イントネーション、スピードなど、まったく通用しない発声になってしまう怖れがあります。
また、発音がわからず遠慮がちに音読したのでは、やはり学習効果は薄くなります。自信をもって音読するためにも、模範が必要です。
音読の際には、学習する英文の吹き込み音声を用意して、オーバーラッピングを十分に行うこと。模範のネイティブ音声を真似ることが、音読となるのです。
吹き込み音声が用意できない英文は、音読の素材としてふさわしくありません。
反復量が少ない
反復量は特に強調しておきたいポイントです。 2,3回読むだけでは、練習量が少なすぎて学習効果がありません。
一通り声に出して英文を読めば良いと思っている人は驚くかも知れませんが、音読とは同じ英文を最低でも20回、30回と読むトレーニングです。
音読を続けているのに英語力が向上しない人は、練習量をチェックしてください。
20回、30回と読めば、その日のうちに音読のメリットであるイメージ化を体験できます。 しっかり反復練習している人は、音読が効果的であることを確信しているはずです。
ちなみに、1日に学習する英文があまりに長いと、当然ながら20回も30回も音読できません。
長すぎると思ったら、英文の量を減らして、練習の量を増やしてください。(特に初級の場合)