このページでは、英語のボキャブラリーを増やす方法を解説しています。
英語力は単語力
ボキャブラリーは、英語力の中心です。英単語を知らなければ、英語はどう頑張っても理解できません。
1フレーズの中にわからない英単語が2,3個あるだけで、内容把握はお手上げになります。
たとえば、以下の英文を見てください。
“Acupuncture helps ailing animals”
上記は、Japan Timesの科学欄の見出しです。
Acupuncture が「針治療」だとわからないと、お手上げのケースです。 まして、ailing が「病気の」だとわかっていないケースでは、さらに意味不明になるでしょう。
「いや、もっと読み進めれば英単語の意味は予測がつく」という人がいます。全文の中で、その2つの単語だけがわからないなら、予測できるかも知れません。
しかし、その次のフレーズも、さらに次のフレーズも、わからない単語が2,3個ずつ含まれていたら?
1フレーズ毎に知らない単語が混ざるような英文は、どうしたって読むことはできません。これはリスニングでも同じです。
「英語力は単語力」というのは間違いありません。
文脈で覚えることの限界
単語を覚える方法として、「英文の文脈で覚える」という言葉をよく耳にします。
たしかに、全体の文脈の中で「担っている意味」を経験した方が記憶に残ります。ボキャブラリーを文脈で覚えるのは原則です。
しかし、極端にボキャブラリーが少ない人にとっては、文脈で覚えるのは無理があります。
語彙力がない人にとっては、英文はわからない単語だらけ。片っ端から英単語を覚えていく気になるでしょうか。
英単語を覚える効率も悪いし、英語の学習をしていて辛いはずです。
文脈で覚えるというのは、知らない単語がごく一部だけのときに効果を発揮します。あるいは、うろ覚えの単語をより強固な記憶にするときに重要になるのです。
理想を言うなら、知らない単語がほんの少しだけ含まれるような、簡単に感じられるレベルの英文をたくさん読むことです。そうすれば、無理なく文脈で覚えることができます。
しかし、私はあえて、ボキャブラリーが極端に足りない人は、英単語だけを学習するタイプの教材をお勧めします。
基本単語を一気に覚えてしまうと、その後の英語学習が楽になるからです。
「単語はぜったいに英文の中で覚える」などと意地にならないでください。基本単語くらいは前もって知っておくべきです。
「えいご漬け」みたいな教材はどうでもしょうか。 音から覚えることができるし、単語とフレーズだけで、効率よく基本単語をマスターできます。
あるいは、「英単語ピーナッツ」もお勧めです。こういった楽しい問題集で基本単語をマスターしてください。
英単語の覚え方には10個の原則がある
英単語を覚える方法には、いくつか原則があります。
10個の原則としてまとめてみました。 これらの原則を元にして、自分なりに工夫してボキャブラリーを増やしていってください。
1.音から覚える
音を伴わない言語はありません。 音から学ぶことが、語学の大原則です。
英単語は必ず音を覚えるようにします。 文字を見なくても、音だけで意味がわかるように学習する必要があります。
英単語を覚えるときは、必ず音声付の教材で学習しましょう。 音声が付いていない場合は、オンライン辞書サイトで発音を確認しましょう。
2.体で覚える、声に出す
音声をただ耳で聞いたり、文字を見ているだけでは、英単語を覚えることはできません。
必ず声に出してください。 その英単語を何度も発声してください。
体を使うほど身体記憶として残ります。声に出すだけでなく、紙に書いてみたり、PCにタイピングしてみるのも有効です。
3.文脈を重視する = 有意味学習
まったく無関係な20個の英単語をばらばらに覚えるより、1つのエッセイの中の英単語を20個覚えるほうが効果的です。
それぞれの英単語の意味が、より広い文脈の中で位置づけるられていることで覚えやすくなるのです。脳は記憶の手がかりを作りやすくなります。
たとえば、スタディサプリのようなドラマ形式の英語教材だったら、それぞれのテーマに関連した英単語を覚えやすいです。
4.反復と想起
1度で完璧に覚えるのは無理な話です。 反復すればするほど記憶は確かなものとなります。 英単語を覚えるためには、ある程度の反復学習は当たり前のものとして覚悟しましょう。
また、記憶するためには、覚える動作より、思い出す動作が重要となります。
脳は、「どれだけ思い出そうとしたか」によって記憶が確かなものになります。 復習を繰り返してください。
5.イメージを使う
意外なほど軽視されているのが、絵や写真を使うということです。 言語の情報よりも、映像(イメージ)の情報は、より深く脳の記憶に刻み込まれます。
イメージを使った学習を積極的に組み込んでください。 具体的な事物の英単語を覚えるときは、その写真を見ながら覚えることが有効です。
イメージ化しやすいストーリー教材なども英単語を覚える上で効果があるはずです。
イラストで覚える単語集を使ってもいいでしょう。
6.日常経験との融合
自分自身の経験と重なったとき、その英単語は忘れられないものとなります。
たとえば、買い物に行く途中で火事があり、消火器で火を消している光景をみた。 「消火器」を英語でなんと言うのだろう。
a fire extinguisher
このように経験の中で英単語を覚えることが有効です。
日ごろから、「これを英語でなんと言うのか?」といった問題意識をもっておきましょう。
7.アウトプットしてみる
英語学習の原則でもありますが、少しでもアウトプットすることで、効果的にインプットできるようになります。
たとえば、少しの時間でいいからライティング学習をすることで、リーディング学習をより効果的になっていくのです。
英単語を覚えるときも、単にインプットしようとするのではなく、その英単語を使う学習をどこかに組み込みましょう。
覚えた英単語で英文を書いてみる。覚えた英単語を使って英会話してみる。 そういった時間が少しでもあるとボキャブラリーが身に付きやすくなります。
この原則は極めて重要なので、下記で改めて解説します。
8.コロケーションで覚える
コロケーション(語彙連結)とは、同時に使われる単語のことです。
たとえば、” an umbrella “「傘」のコロケーションは何でしょうか。
「傘をさす」「傘をたたむ」「折り畳み傘」などでしょう。
” open an umbrella ” ” close an umbrella ” ” a folding umbrella “
これら、open , close , folding などがコロケーションとります。
英単語を覚えるときには、単に “umbrella “だけを「傘」として覚えるのではなく、その単語を使った文章で同時に使われやすい英単語も覚えましょう。
こうすることで、覚えやすいだけでなく、使える英語も身に付きます。
コロケーションで英単語を覚える方法は、この本で紹介されています。
9.語法も覚える
基本単語については、語法を覚えることも大切です。
たとえば、” explain “という動詞。 「explain = 説明する」 のような覚え方では不十分です。
「人にXを説明する」というときには、
explain X to 人 .
のように、前置詞 to を使うこと(= 二重目的語をとれないこと)を知っておくべきです。
このように語法を学べば学ぶほど、より深くその英単語に触れることになるので、確実な記憶に結びつきます。
語法を学ぶのは時間がかかりますが、語法が細かい英単語は重要単語なのです。 時間をかけるだけの価値があります。
10.再整理とネットワーク
英単語はさまざまなネットワークをもちます。 同意語、反意語、類義語、語源などです。
それらのネットワークは英単語を覚えるときに有効とされてきました。 ただし、最近の研究では、最初から類義語や同意語を覚えると記憶が混乱するという話もあります。
そこで、一度覚えた英単語について、より記憶を確かなものにするためにネットワークを使うといいでしょう。 知らない英単語をはじめて覚えるときではなく、すでに知っている単語について、同意語や反意語を調べてみることが有効です。
また、語源もネットワークのひとつとして使うことができます。興味があれば、語源を調べてみてもいいでしょう。
ボキャブラリーを増やすコツはアウトプットにある
ボキャブラリーを増やしたいなら、インプットではなく、アウトプットを繰り返すことが重要です。
上述の「英単語を覚える10原則」の7番目です。ここが一番重要なコツになります。
知らない英単語を覚えようとした段階では、とうてい長期的な記憶になりません。学習したはずの英単語をなんとか思い出そうとしたときに、記憶が強固になります。
覚えた回数ではなく、思い出す回数が大切なのです。
経験的に知っている人も多そうですが、心理学の研究でも実証されています。
問題を解くと覚えやすい
米バデュー大学のカーピック博士の研究によれば、以下の結論ができました。
入力を繰り返すよりも、出力を繰り返すほうが、脳回路への情報の定着がよい。
日経BPに解説記事があります。→ 脳は「入力」より「出力」で覚える
英語学習のために言い換えるとしたら、以下のようになるでしょうか。
- インプットよりもアウトプット。
- 復習ではなく問題を解く。
- 覚える勉強ではなく、思い出す勉強。
これら3つのことは、勉強のコツとして有名かも知れません。
「教科書を読んでいても頭に入らない。問題をたくさん解くように。」
中学のときか高校のときか、一度は耳にしたような言葉です。 学校の先生とか塾の講師から、そんなことを言われた記憶はないでしょうか。
覚えるためにはアウトプットが重要なんです。 思い出そうとするプロセスで、記憶は定着するみたいですね。
アウトプットで覚える方法
ボキャブラリーを増やすためには、ただ英語に触れているだけではダメで、アウトプットをしましょう。
方法としては以下の2つがあります。
- 英単語用の問題を解く。(アプリの単語ゲームなどでもOK)
- 英作文(ライティング)をやる。
繰り返しになりますが、重要単語については、いちいち文脈で覚えるなんてやってないで、英単語用の問題集で勉強してしまった方が早いものです。
ボキャブラリーがないと英文を読んでいても苦痛なので、文脈で覚えるためのリーディングをやる気にさえならないと思います。
2番目はライティング。アウトプットの練習法です。 ライティングは私個人としては最強の学習法のひとつだと思っています。
それが、和文英訳であれ、日記を書くようなフリーライティングであれ、Eメールとかで使われる英借文であれ、どの学習であってもすごく実力アップします。
ライティング学習をやり始めると、たしかにボキャブラリーが増えていく気がします。 自分の英文で使った英単語って、忘れないものなんですよ。
具体的には、ライティングの学習法のページをご覧ください。
感情を動かすから英単語を短時間で覚えられる
もうひとつ、ボキャブラリーを増やすコツがあります。
感情を動かせば動かすほど強固な記憶になり、英単語を短時間に覚えられるというものです。
意味不明なアルファベットの羅列は、どんなに頑張っても早く覚えることはできません。 そこに意味を感じられると、覚えやすくなります。
「意味」があれば「感情」が動くことになります。 感情をより動かしたほうが英単語は記憶に残ります。
感情は記憶しやすい
ボキャブラリーを増やすためには、有意味学習をすることが基本ですが、その点について考えてみましょう。
たとえば、以下の単語を見てください。
- mandatory
- penetration
- deduction
- testamentary gift
上から「義務的な」「浸透」「控除」「遺贈」といった意味ですが、これらは司法小説で頻出する英単語です。
米国は優れた法律小説が多いですが、小説の中で出てくると一発で暗記できることが多いです。
その単語が出てくる前後の文脈にドラマがあるので、感情が動くからです。感動していたり、怒っていたり、ハラハラしていたり。
物語の中の「言葉」として触れた英単語は、短時間で覚えられて、ずっと記憶に残る。
一番いいのは、英語圏で生活して、まさに自分の人生の中で英語を覚えることかも知れません。それができないなら、本を読むのが一番です。 ノンフィクションでも構いません。興味がもてる内容なら何でもいいのです。
感情が動けば、英単語は一発で覚えられます。
例文から想像するだけも感情は動く
興味の持てる洋書を読む。感情が動くからボキャブラリーが増えていく。これが基本です。
しかし、覚える必要のある英単語もあります。仕事で使う英語、試験に出る英語などです。
「洋書を読んでいればいつか出てくるだろう」なんて、悠長に構えるわけにはいきません。覚える必要があるなら、きっちり覚えてしまいましょう。
方法論は上記と同じで、自分の感情が動くように工夫すればいいのです。
そのためには、例文から(何かを)想像してみることをお勧めします。
英英辞典サイトを検索すれば、英単語の例文はいくらでも手に入ります。 その例文を使って、自分なりに物語を設定するのです。
上記の “mandatory”を例にするなら、Longmanに以下のような例文があります。
“Crash helmets are mandatory for motorcyclists.”
「オートバイに乗る人はヘルメットを装着しなければならない」
こういう例文を見たときに、少しでもいいから感情が動く想像をします。
「そういえば、「イージーライダー」ではヘルメットかぶってなかったな(笑」とか。
「あの映画を見た親は、子供に上記のフレーズを言ったかもな(笑」とか。
こういう想像を少しでもできるかどうかは、英単語を一発で覚えられるかどうかの違いになります。 例文を見て想像するのは数秒でできることです。意図的にやってみてください。
「英単語は例文で覚える」といった言葉をよく耳にしますが、ひと手間かけて想像することが大切。
少しでも自分の感情を動かすことが、英単語を暗記する秘訣です。
単語帳ではなくフレーズ帳を作る
最後に、フレーズ帳について紹介します。これはボキャブラリーだけでなく、英語の構文力や作文力も身に付く学習法です。
英単語を覚えるために単語帳を作る人がいますが、お勧めしません。フレーズ帳にしましょう。
単語帳や単語カードを作る理由がない
私が中学生の頃、単語帳を作る生徒がたくさんいました。私も1度2度作ったことがあります。
英語の授業に出てきた単語をルーズリーフに書いていく。 発音記号とか、和訳とか、備考を綺麗に1行でまとめます。
試験前になると、単語を暗記するためにリング形式の単語カードを作ることもありました。
↑こういうやつ。 表に英単語、裏に和訳とか語法を書きます。懐かしいですね。
中学生の頃は、どうすれば英単語を覚えられるのかわからなかったので、何か覚えられそうな作業をしたくなって、つい作りたくなったのです。
しかし、単語帳にしても、単語カードにしても、学習効果は薄かったように思います。 書くこと自体は覚える方法論のひとつとしてありえますが、チラシの裏にスペルを書き散らせばそれで十分です。
もちろん、書くだけでなく、声に出すことも大切です。 そして何より、英文の中で覚えること。英文を音読(含むオーバーラッピング)して覚えること。
つまり、綺麗な単語帳を作る必要性はどこにもありません。
さすがに社会人の方で、単語帳を作ったり、単語カードを作る人は少ないと推測します。最近の学生さんは作っているのでしょうか。
自分の視点で選ぶから記憶に残るフレーズ帳
単語帳を作る必要はありませんが、フレーズ帳となると話は別です。
フレーズ帳とは、自分が使いそうな英語を収集することです。英単語ではなく、フレーズ丸ごと抜き出します。
新しく学んだ教科書のフレーズを片っ端から抜き出すのではありません。自分なりのテーマで抜き出すのです。
たとえば、ビジネス英語を学んでいる人は、「このフレーズは海外出張のときに使えそうだ」とか。自分が英語を使っているシーンを思い浮かべて、使いそうなものを選びます。
フレーズ帳といっても、ノートに書く必要はありません。
PCにタイプして、フレーズファイルを作ってみてはいかがでしょうか。 ニュースサイトを見ていて、使えそうなフレーズを見つけたらコピペしてもOKです。 ほんの数秒のことです。
探して、見つけて、収集して、編集する。 この作業を経た英語フレーズは不思議なほど覚えられます。
自分なりの視点で「選ぶ」というのが大きいのでしょう。
自分のフレーズ帳は何度も見直す気になりますから、なおさら記憶できます。
教科書として与えられた英文がダラダラあるのと違って、「選ぶ」というほんの少しの能動性を出すだけで、学習効果がまったく違ってきます。
たくさんの英文に触れて、ぜひ自分の視点でフレーズを選んでください。新しい単語を全部覚えようとするより、はるかに効果的にボキャブラリーが身に付きます。